:子どもの『意志』ってどう育つの? 幼少期から大人まで

自分の人生を存分に生きてほしい――それは、親や教師なら誰もが願うことです。

では、どうすればその力を育めるのでしょうか?

シュタイナー教育では、その鍵は「意志」にあると考えます。

ここでは、幼少期から私たち自身大人の意志までをみていきましょう。

幼児期から大人まで。意志って何?

幼児期:体を動かすことで意志の種を育てる

幼児期から小学校低学年にかけて、子どもたちの意志は、まず体を動かす力として表れてきます。

走ったり、跳んだり、自由に遊ぶ中で、子どもたちは「自分が動くと何かが起きる」という感覚を自然に学んでいきます。

転んで立ち上がる、何かを掴んでみる――こうした一つひとつの体験が、世界と自分をつなぐ大切な経験になるのです。

この時期の意志は、まだ頭で考えるものではなく、本能的で自然な衝動として表れます。

小中学生:感情を通じて意志を深める

小学校中学年から高学年になると、子どもたちの意志は感情とつながりを持ち始めます。

この時期の子どもたちは、自分の行動が友達や周りの世界にどんな影響を与えるのかを少しずつ意識するようになります。

困っている友達を助けたいと思ったり、壮大な自然を見て感動したり、豊かな芸術的な体験で感動したり――そんな感情が、意志を動かす大きな力になっていきます。

また、善悪や責任といった感覚も、この時期に芽生えてきます。行動の背後にある「どうしてそうしたいのか」という動機や、自分の気持ちを形にする力が育つ大切な時期となります。

高校生:考える力と結びつく意志

高校生の時期になると、子どもたちの意志は思考と結びつき、より深い形で表れてきます。

この頃の意志は、ただ行動に移すだけではなく、「これをやるべきだろうか?」「自分にとって大切なことは何だろう?」と考え、熟考する力を伴うようになります。

自分の価値観や信念をもとに選び取る、内面的な選択の時期です。

また、「自分は世界の中でどんなふうに存在したいのか」を探るようにもなり、その問いを通じて意志は人格の一部として深く根付いていきます。

これは、自分の人生を形作るための大切な一歩と言える時期です。

大人として:自由な意志としての成熟

最終的に、大人の意志は「自ら選び取り、自らを導く力」となります。

シュタイナーは、人間が真に自由な存在になるためには、意志が自我によって意識的に導かれる必要があると述べています。

この自由な意志は、他者や世界に影響を与える力であると同時に、自分の人生を自分で責任を持って切り開いていく力でもあります。

この段階では、意志はただ衝動的に行動するものではなく、思考、感情、そして内なる自分との対話を経て、最も深い部分から選択されるものへと変容しています。

意志は、最終的に「自分の力を他者や世界のために使う力」へと成長していきます。

成熟した意志は、自分の考えや感情をまとめて、「これが自分の使命だ」と感じたときに力を発揮します。それは、自分だけのためではなく、周りの人々や世界を少しでも良くするための行動として現れます。

たとえば、「自分にできることを通じて誰かの役に立ちたい」「この仕事を通して世界に貢献したい」と思い、それを実行する意志には深い意味と力があります。それは、自己中心的な欲望ではなく、他者や社会との調和を意識した意志です。

自分の人生を切り開きながらも、周りの人や世界とつながり、その中で自分らしく生きる――

これが意志の到達点と言えるでしょう。

自分だけでなく、誰かや何かのために力を使えるというのが大人になったときにあるべき意志の力なのです。

「ゆっくりと育てていく」という考え方、とても面白いと思いませんか?


意志を人間の成長の段階に沿って見てきました。意志は、幼い頃に無意識的な体の動きから始まり、感情や思考と結びつきながら、ゆっくりと育まれていくものです。

この「ゆっくりと育てていく」という考え方、とても面白いと思いませんか?

初めから「強い意志を育てるぞ!」と意気込むと、うまくいかないことに心が折れてしまいがちです。

でも、成長段階に応じて意志を少しずつ育てると考えると、焦らずに子どもの意志を育てることができそうですよね。

そして、たとえ大人になってからでも遅くはありません。

意志を育てるために必要なのは、実はとても小さなことです。

一見すると意味がないと思われるようなことでも、毎日決まった時間にそれをやってみる。それがほんの些細な行動であることがポイントです。

大きなことではなく、ささやかな行動を毎日繰り返す。

その積み重ねが、自分の中に強い力を育んでくれることを、きっと感じられるはずです。

今日は「意志」について一緒に考えてきました。このお話が、子育てやご自身の歩みに少しでも役立てば、とても嬉しいです。